TRENDIA CLASSIC

餅の歌

槇村浩

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餅とは 何と 鋤き返された幼い南の郊外の野の思い出のように 甘いものだろう! 高岡の ひとりぼっちの 叩き廻っても後の沼地一ぱいがらんどうな響きしかはね返してこぬ 豚箱の中で 僕はしみじみと生のうどんの皮をひっぺかしながら そう思った それは 青い蚊帖が雨上りの甘酸っぱい臭いをたてながら 差入れの風鈴と一しよにゆさ/\揺れていた時だった!

背の低い 長髪の いつも怒ったような顔をした それでいて人なつこい 三十を越えたばかりの生粋の民農出の労働者 日本化学労働組合員、全国会議全農高知県聯の草分け (激励と共に、これは彼から来た) ―――同志、林延造君! 彼は 争議が不利になり 引きぬかれた百舌の巣のように 組織がめちゃ/\にふみあらされた時も 沮喪せぬ組合常任であることができ 嵐と、土砂ぶりの天候の下で まつかさのように散らばった部落々々の貧農の 信頼された相談相手であることができ 不当逮捕監禁×(1)問と弾圧下のデモのまっただなかで 傷だらけの額を硬ばらせながら ひきさかれた服とむしられた頭髪の間から 昂然と 地主に逆襲する土地と××(2)歌の 乱唱の音頭をとり 生活が どんなに重く彼の上にのしかゝろうと 常に愉快なピオニールの餅屋であることができた ピオニールが彼の餅屋を愛する以上に 彼は少年らのはつらつさと、彼等の伸びようとする意力と文化とを愛した 風のように 彼はもうちょっとばかし大きいピオニールたちの 豚箱から豚箱に現われた にっこりと手をあげる間もなく………! 僕はうなづきうなづき―――投げこまれた餅の袋の 一きれ一きれを ごっくりごっくり咽を鳴らしながら飲みこんだ ―――餅とはめったにこんなにうまいものではないのだ!

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