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TORENDIA

横顔

本文約770字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

午前六時の川風と雪混じりの雨が叩きつける工場の鉄門前、長い行列に並ぶ労働者たちの元へ突然ビラが舞い落ちる。それは地下に潜伏しつつも健在であることを示す日本共産党のビラであった。突然の配布に戸惑いながらも、その言葉を胸に秘めた労働者たちは、監督や警官の監視の目をかいくぐり、自らの正体を再確認して工場へと足を踏み入れる。プロレタリアとしての誇りと団結を綴る詩である。

上田進

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🎧 横顔 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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1

壊滅した――と言う

そうかも知れないと思う

健在だ――と言う

そうかも知れないと思う

地下に追込められたものは

益々深く地下に潜り込んだのだ

俺達にはてんで見当がつかなくなったのだ

2

汽笛の白い蒸気が

灰色の空にちぎれ飛んだ

午前六時の川風が

雪交りの雨を赤煉瓦に叩きつけ

脂染みた硝子窓をゆすぶった

肩をすぼめた俺達の行列が

鉄門の外にまだ長くつづいていた

3

泥んこの通路がやけに癪に触る

癪に触るから大股で歩いて行く

口の開いた護謨長の鼻先に

ビラが落ちて来た

顔を上げると頭の上に

赤や黄のビラが舞っていた

風が一吹き強く吹いて

霙の中にビラが一段と激しく散った

むこうを見た

厚いコンクリの塀が立ってるだけだった

4

何処から舞って来たのか?

どんな人が撒いたのか?

俺達は知らなかった

「俺達の中に居る人かも知れぬ」

――だが、たしかに、今、此の手に

俺達はビラを握っている

日本共産党のビラを!

これは夢じゃない

そら、ひっぱたかれたら痛かろうが?

本当だ!

5

衣兜じゃ駄目だ

肌へつけときな

よし……いやもう一度見て

左の下の隅の五つの文字

見つめていると

レーニンの顔になって

笑い出して

躍り出して

ぼやけた……

いけねえ、涙で鼻がつまって

6

ピチャピチャ……急に足音が高くなり

行列が騒がしくなった

俺達は胸を張って工場に入ってった

俺達はプロレタリアだぜ!

7

眼の底に染みついた

頭の心に焼きついた

この五つの文字――それが

胸の中を引掻きむしる

8

お出でなすったな、監督さん

パイ公連れてさ。

出すもんかい、

これあ俺達の御守だ。

………………

へん、ざまア見やがれだ!

9

俺達は見た

俺達は知った

俺達の党は健在だ!

俺達はやけに嬉しいんだ

(おお、その胸に抱かれているのは

地下に健在な党がチラリと見せた

小さい四角な、赤い横顔!)

(一九三〇年三月六日作 『戦旗』同年六月号に発表 一九三一年八月戦旗社刊『一九三一年版日本プロレタリア詩集』を底本)

完

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