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TORENDIA

冬のしぶき

本文約390字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

網走の刑務所に送られて二年四ヵ月になる息子を想い、霜焼けの指先で写真をあたためながら、正直だったわが子への募る恋しさを詠む伊藤信二の詩。

伊藤信二

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🎧 冬のしぶき / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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お前が工場の帰りに買ってきてくれた

この櫛は

もう あっちこっち 歯がこぼれた

梳いたヌケ毛の一本一本は

お前がオッカサンとよばってくれる

その日がまためぐってくる年月のながさを

ヒトツキ フタツキ と

かぞえさせる

お前からの夏のタヨリを

帯にはさんでいる――

六十二にもなったわたしのふしぶしは

ズキン ズキン ズキン

凍れにたたかれて

ヒビがひろがってゆく

お前がアバシリの

刑務所におくられてから二年と四ヵ月

くる年々の冬のはじまりから

ほほッぺたのまるっこいお前の写真を

霜焼けに疼く指先にささえて

炉ばたの隅で

あッためてやってるたんびに

わたしの

薄くなったマツ毛は濡れて

ああ どんなにか

本当のお前に会いたいことか

正直なわたしのセガレ

ウソやゴマカシでは

ゴハンをたべれなかったお前

豆腐汁の好きだったお前の

お椀の上でのほほえみが

今もわたしに

――ふるえる ふるえる

コブシをにぎらせる

(『プロレタリア文学』一九三二年一月創刊号に発表)

完

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