本文へ移動
TORENDIA

落葉

本文約500字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

井戸端で水仕事をする私のもとに、秋風に吹かれた黄色い落葉が舞い込んでくる。その乾いた音を聞きながら、私は生涯を貧しく終える無数の人々の生の空しさを重ね合わせ、自らの胸の痛みを感じる。やがて、落葉が朽ちて土壌を豊かにするように、今の苦悩に満ちた生活や失われたものもまた、いつか新しい世界を芽吹かせる糧になると信じ、激しく散る落葉に己の生の在り方を投影する心情を綴る詩である。

木村好子

速度
🎧 落葉 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

落葉よ、落葉よ、

秋風に吹かれて、

お前がカラカラと鳴り乍ら

井戸端に水すすぐ私の手元へ、黄色く、

舞いこんでくると、

おお、私は胸ふたがれる!

何一つもたらすことなく、

過ぎ去った日の一日一日を

ただ、えいえいと

つづれつくろい、米かしぎ

凡ての希みも、よろこびも、

かなしみさえもおき去りにして

生涯をただ貧しく終えゆく無数の私らの生命のように、

ああ、お前は散ってゆく、

秋風になぶられて、舞い乍ら……

空は、

こんなに青く、深く、

豊かにみのっている穂波もあろうに。

落葉よ、

お前のそのカラカラと鳴る音は

どんなに、私の胸をたたき、

あわれを――、

はきよせられ、すて去られるものの上にはせさせるか!

ああ、ひょうひょうと舞い乍ら、

むなしく散りゆく落葉よ!

けれども、

お前のそのつもりつもった骸が、豊饒な土壌をつくり、

やがて、来る春にそなえるように、

私たちの、このいためられた生活が

失ったものが、

地上にみちあふれ、天地を包むとき、

そこに、

新らしい世界が……

おお落葉よ、落葉よ、

私らのもみくちゃな生よ、

苦悩のカラよ

秋風にたたかれて、激しく、

散れよ、散れ!

(『詩精神』一九三五年十一・十二月合併号に発表 一九三六年一月前奏社刊『一九三五年詩集』を底本)

完

木村好子の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本