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TORENDIA

身体検査日

本文約470字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

身体検査の当日、教室には不安なざわめきが満ち、子供たちは蓄膿病や扁桃腺などの病を抱え、切実な眼差しで教員を見つめる。四十人の生徒のうち三十人が身体的な不調を抱える過酷な状況下で、一人の生徒が朗読の途中で泣き崩れ、教室は悲痛な沈黙に包まれる。教員は、かきむしられる心を押さえ、子供たちに向けて、病を治すための塩うがい法と、貧乏をなくすための方法を説き聞かせる姿を綴る。

倉橋潤一郎

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🎧 身体検査日 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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その日

学校では不安なざわめきが感ぜられ

私はいくつかのあわれなささやきに耳をいためた

つと立ち寄り

じっとその子の瞳をみていると

うちしずみものかなしいうったえるような色を浮べて

じっとみかえす

お前もか!

お前もか!

私は

うったえる瞳の奥にひろがる貧しい生活を思い浮べ

黙って生きてゆかねばならない

曇った運命をかなしんだ

先生!

蓄膿病ってなおるでしょうか?

淋巴腺、アデノイド、扁桃腺、中耳炎

みんなきりつめた様子で私をみつめるのだ

四十人中三十名

ものかなしい瞳の色が 今日

どうしてぬぐわれよう

朗々としみるような声が

くすぐるようにうつろにかわり

一節よんでは、はなをすすり始め

一句よんではとぎれ始め

だんだんとしわがれてくる

「もういい 代って」

そう言ったが

がばとうつぶし すすりなきにくれる

級長とその子

教室にたちこめてくる冷たい冷たい

涙のちんもくよ

私はかきむしられる心にむちうって立ち上った

そうして

子供たちに病気をなおす方法をとききかした

かんたんな塩のうがい法と

もひとつ

貧乏をなくす方法について

(『詩人』一九三六年十月号に石川究一郎名で発表 『倉橋潤一郎作品集』を底本)

完

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