或所に太郎といふ子供がありました。太郎は大へん犬ずきでした。或日太郎はお母さんに二十銭お小づかいをいたゞきました。太郎は「何を買はうかなあ」といひ乍ら町を歩いて居ました。太郎はあちこち歩いて居ますと、二匹の小犬が今にも殺されさうに成ってゐました。太郎は情深い人でしたから「モシ/\その犬はどうしたのですか」「アヽ此の犬かね、此奴家へ入って来て私達が食事してるそばでクン/\/\/\泣きやがってね、うるさいから今殺そうと云う所だ」「なら私にそれをくれまいかネ」「たゞではやれないよ」その人はこすい目をしていひました。
「そんなら銭を出すが売ってくれまいか」「ホウ銭を出すといふのか、では三十銭おいて行け」「高い二十銭にせぬか」「よしハヽヽヽうまいもうけだ」とかげで舌を出した。太郎は家へ帰ると、「お父さんコレ、コノ犬を買って来たよ」「何、可愛らしい小犬だナア」お父さんはしきりにその犬をほめて居ました。小犬はかはいらしい目をバチ/\させながらお父さんにじゃれつきました。「アヽさうだ、お父さん馬に草をやらねばならないのだっけ」「アヽさうだ、それではやってくるがいゝ」「ではうらへ行って来ます」と出かけると、二匹の犬は其の後をなつかしさうに尾をふり乍らついて行った。
二匹の犬は太郎が馬に草をやってしまふまで見て居ました。それがすむと二匹の小犬は一匹は太郎のきもののすそをくはへて、コチラへ/\といふやうに引っぱります。又後の一匹は時々後を向いては太郎に、コチラへ/\といふやうにまねきます。太郎は面白く成って後へついて行きますと田舎へ出て来て、たんぼの中を何町も行きますと一つの古い社があります。そのうらに大きなもみの木がありました。犬はその根元を一生懸命にほって居ます。太郎も面白く成ってそこをほって居ると一つのふくろが出ました。その結目をとくと中からお金がどっさり出ました。お金は今しも入らうとする太陽に照らされて、キラ/\/\と目もまばゆいばかりに光りました。太郎は「アッ」といって思はず後へしりもちをつきました。とたんにサーッと金と銀の光が太郎の目を流れるやうに ました。