TRENDIA CLASSIC

私は紙である

槇村浩

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高い/\一万尺あまりもあらうといふ山の上に私は生れたのでした、或日一人の金持らしい人が登ってまゐりまして私や私の仲間を見て「惜しいものだ、りっぱな紙に成るのに」といはれました。私は別に気にも止めないで居ましたら四五日して大勢の人が私等のそばへやってまいりました。それから私等はりっぱな食物をいたゞく様に成りました。いく月もたった後一人の人がやってまゐりまして「もうそろ/\始めてもいゝな」といひ沢山の人を呼んで私等を切りました。いたいのをこらへて居ますとやがて四五日の中には皮はむかれ骨はのけられ見るからに浅ましい姿となりました。これは後で聞いた事ですが、あの金持は紙業家で早速に私等を買ひ紙にするつもりだったのださうです。私等はもう木ではありません。りっぱな/\日本紙です。する中に私等は汽車に積れました。「ナゴヤ――ヨコハマ――」等と外で云ふ声が聞えました。「シンバシ――」と大きな声がしますとすぐに「ガチャ/\ン」と大きな音がしました。

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