本文へ移動
TORENDIA

廃園

本文約380字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

骨を折る音の中に乾いてゆく流れと忘却を待つ半身を描き、鞭打つものも支えるものもない廃園の静寂を綴る森川義信の詩「廃園」の異稿。

森川義信

速度
🎧 廃園 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

骨を折る音

その音のなかに

流れる水は乾き

鳶色の風は落ちて

石に濡れた額は傾くままに眠つた

みえない推移の重さに

骨を折る音

その音のなかに

佯りの

眼を閉ぢて

凍える半身は

倒れるもの影とともに

うつしく忘却をまつた

骨を折る音

その音のなかに

おまへを鞭うつものはすでにない

目かくしをする掌もなく

いのちににじむ明りもない

凭れかかる肩もなく

壊れてゐる家具さへない

梢をゆすぶる果実もなく

おまへの手はもう

その樹を撃たうともしない

骨を折る音

その音のなかに

ひとつ ひとつ

亡びていつたものは何であらう

ただ暗い調和のうちに

空しい願いや憧れは

どこへ歩いてゆくのか

もの哀しい植物たちのうごく

ひそかな気配がとほつていつた

それはすでに響きではなかつた

地をはなれてとほく消えてゐた

それはすでに明りではなかつた

意識の暗がりにあふれでる影像であつた

それはすでにひとつの意志ではなかつた

いひやうのない深い困憊に沈んでゐた

完

森川義信の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本