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TORENDIA

生地売り

本文約300字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

山間の一軒家に宿るロシア人の反物売りが漏らす片言の日本語に、ただ一人心を寄せる詩人。憲兵の監視や村人の無理解の中で、異国の商人の哀愁を思う泉芳朗の詩。

泉芳朗

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🎧 生地売り / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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ロシヤ人の生地売りは 山間の一軒家に宿ってゐた

「生地 日本 ウレナイ ヨカ ヨカ」

無論誰にも面と向かって語ったのではない けれど私は只一語聞いた胸に 幾回となく生地売りの言葉をくりかへした

あの一晩中 山間のあばら家に耳をそばだてて ××の鋭い眼光もて探照してゐた憲兵でも 否恐らく この狭隘な山間に住む人皆に 生地売りの哀愁はわからなかった

人々は 異国人の珍奇を只むさぼり嗤った

「生地 日本 ウレナイ ヨカ ヨカ」

ああロシヤの一商人は たった今までも私の求めてゐる或物を事実に示してくれた 腕を組んで湿っぽい夜空を見上げた私には 星の一つもまたたいてくれなかったけれど

いばらのさしかかった山路は私の前に遠く限りなくつづいてゐる……

完

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