森林と樹木と動物
本文約24,100字 ・ 読了時間 約49分
あらすじ(AIが作成しました)
山林の効用や動植物の生態を綴る。人類の歴史における森林の役割から説き起こし、洪水予防や水源涵養といった国土保安上の機能を詳述する。あわせて精神的保養の重要性を解き、日本各地に残る老樹名木の歴史的価値や、山岳地帯に息づく鳥獣・魚類の姿を紹介する。自然の重要性を伝えると同時に、環境への理解を深め、山林や名木を保護し大切に育てていく意義を説く一冊である。
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山と人
(一)森林の效用 (イ)洪水の豫防。 森林とは山や丘の一面に、こんもり木が生え茂つて、大きな深い林となつてゐる状態をいふのです。われ/\の遠い/\最初の祖先が、はじめてこの地球上に現れたころには、森林は、そのまゝ人間の住みかでもあり、また食べ物の出どころでもありました。たゞ今でも馬來半島のある野蠻人種は、木の枝の上に家を作つて住んでゐますが、これなどは、今言つたように、人間がぢかに森林の中にゐた習慣が殘り傳はつた面白い一例です。ともかく大昔の人間は、森林に住んで、草や、木の實や、野獸や、河の魚などをとつて、生のまゝで食べてゐたもので、ちょうど今日の山猿のような生活をしてゐたのです。
それが、だん/\と人口がふえ、みんなの智慧も開けて來るに從つて、やうやく火といふものを使ふことを知り、食べ物もたり燒いたりして食べるようになり、また寒いときには木を燃してあたゝまることをおぼえたのです。つまり薪や炭の材料として森林を利用するようになつたわけです。それに、また一方では人口の増加につれてこれまで食料にしてゐた草や木の實もだん/\足りなくなり、それを補ふために畑をこしらへて、農作をする必要がおこるし、同時にまた野獸も、しだいに少くなつて來たので、牧畜といふことをしなければたちいかなくなりました。その農作地と牧場とを作るためには森林の一部分を燒き拂ひ燒き拂ひしました。ですから彼等のゐる村落附近の山林は、後にはだん/\に狹く、まばらになつて來て、つひには薪の材料にも不足するようになりました。