TRENDIA CLASSIC
遺産分配書
富永太郎
1 / 1
わが女王へ。決して穢れなかつた私の魂よりも、更に清浄な私の両眼の真珠を。おんみの不思議な夜宴の觴に投げ入れられようために。
善意ある港の朝の微風へ。昨夜の酒に濡れた柔かい私の髪を。――蝋燭を消せば、海の旗、陸の旗。人間は悩まないやうに造られてある。
わが友M***へ。君がしばしば快く客となつてくれた私の Sabbat の洞穴の記念に、一本の蜥蜴の脚を、すなはち蠢めく私の小指を。――君の安らかならんことを。
今日もまた、陽は倦怠の頂点を燃やす。
シエヘラザードへ。鳥肌よりもみじめな一夜分の私の歴史を。
S港の足蹇へ。私の両脚を。君の両腕を断つて、肩からこれを生やしたまへ。私の血は想像し得られる限り不純だから、もしそれが新月の夜ならば、君は壁を攀ぢて天に昇ることが出来る。
***嬢へ。私の悲しみを。
売笑婦T***へ。おまへがどれほど笑ひを愛する被造物であるかを確かめるために、両乳房の間に蠍のやうな接吻を。
巌頭に立つて黄銅のホルンを吹く者へ。私の夢を。――紫の雨、螢光する泥の大陸。――ギオロンは夜鳥の夢に花を咲かす。
母上へ。私の骸は、やつぱりあなたの豚小屋へ返す。幼年時を被ふかずかずの抱擁の、沁み入るやうな記憶と共に。
泡立つ春へ。pang ! pang !
富永太郎の他の作品
TRENDIA CLASSIC
俯瞰景
富永太郎
俯瞰景
富永太郎 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
COLLOQU
E MOQUE
UR
富永太郎
COLLOQUE MOQUEUR
富永太郎
TRENDIA CLASSIC
秋の悲歎
富永太郎
秋の悲歎
富永太郎
TRENDIA CLASSIC
AU RIMB
AUD
富永太郎
AU RIMBAUD
富永太郎
TRENDIA CLASSIC
美しき敵
富永太郎
美しき敵
富永太郎
TRENDIA CLASSIC
横臥合掌
富永太郎
横臥合掌
富永太郎
TRENDIA CLASSIC
画家の午後
富永太郎
画家の午後
富永太郎
TRENDIA CLASSIC
影絵
富永太郎
影絵
富永太郎
TRENDIA CLASSIC
警戒
富永太郎
警戒
富永太郎
TRENDIA CLASSIC
焦燥
富永太郎
焦燥
富永太郎
TRENDIA CLASSIC
頌歌
富永太郎
頌歌
富永太郎
TRENDIA CLASSIC
原始林の縁辺に
於ける探険者
富永太郎
原始林の縁辺に於ける探険者
富永太郎