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TORENDIA

原始林の縁辺に於ける探険者

本文約690字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

陽の眼を知らぬ原始林へ踏み入った熟練の探険者が、植物のエネルギーが充満する暗黒の奥地を旅する姿を綴る。太陽から解き放たれ、獣のような忘却と強靱な植物の露に包まれながら、無心に闇を切り拓いて進む探険者の肉体。大森林の暗黒の赤道を越え、生命の躍動を享受しつつも、旅人は心のどこかに忍び寄る得体の知れない傷感や、自らの存在に対する畏怖を抱え、原始の森の深部をひたすらに歩み続ける旅の過程を描く。

富永太郎

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🎧 原始林の縁辺に於ける探険者 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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陽の眼を知らぬ原始林の

幾日幾夜の旅の間

わたくし 熟練な未知境の探険者は

たゞふかぶかと頭上に生ひ伏した闊葉の

思ひつめた吐息を聴いたのみだ。

たゞ蹠に踏む湿潤な苔類の

ひたむきな情慾を感じたのみだ。

まことに原始林は

光なき黄金の水蒸気に氾濫し

夏の日の大いなる堆肥の内部さながらに

エネルギーの無言の大饗宴であつた。

あゝ嘗て私の狂愚と慚羞とを照した太陽は

この探険の最初の日

さりげなく だが 赤々とその身を萎み

私をこの植物の大穹窿の中へと解き放つた。

その日から私に与へられたのは

獣類の眠りのやうな漆黒の忘却であつた……

それを思へば

今もなほ あゝ 喜びに身が慄ふ!

毛並さはやかな仔豹のやうに しづしづと また軽捷に 私は怪奇な木賊族の夢を貪婪に掻き分けた―― 何ものの悪意も知らず 怖れもなくて 強靱な植物らの絶え間なく発汗する 強酒のやうな露を身に浴び 誇りかに たゞ誇りかに 鼻孔をひらき かぐろいエーテルを分けて進み行くわが身は 心楽しく闇と海とに裂傷をつくる 春の夜の無心の帆船であつた。

だが ときをりは 嘗て見た何かの外套のやうな 巨大な闊葉の披針形が 月光のやうに私の心臓に射し入つてゐたこともあつたが……

恥らひを知らぬ日々の燥宴のさなかに

ある日(呪はれた日)

私の暴戻な肉体は

大森林の暗黒の赤道を航過した!

盲ひたる 酔ひしれたる一塊の肉 私の存在は

何ごともなかつたものゝやうに

やはり得々と 弾力に満ちて

さまざまの樹幹の膚の畏怖の中を

軽々と摺り抜けて進んでは行つたが、

しかし

喩へば肉身を喰む白浪の咆吼を

砂丘のかなたに予感する旅人のやうに

心はひそやかな傷感に衝き入られ

何のためとも知らぬ身支度に

おのが外殻の硬度を験めす日もあつたのだ!

(未完)

完

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