本文へ移動
TORENDIA

警戒

本文約370字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

酔いしれた腕の中で不意に母の面影を呼び覚ます、目に見えぬ触手のような何かへの警戒を、友に語りかける調子で綴る富永太郎の散文詩。

富永太郎

速度
🎧 警戒 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

酔ひ痴れて、母君の知り給はぬ女の胸にあるとき、「*ここにわが働かざりし双手あり」の句を君の耳もとにさゝやき、卒然と君の眼の中に、母君の白き髪と額の皺とを呼び入れるものは何であるか。心せよ、これこそ、世界の構成の最下層から突き出でて、君の心臓の内壁にまで達する、かのへらへらとした気味あしき触手の、節奏なき運動の効果なのである。人はこの触手の存在に気付くことがあまりに少なく、しかもそれのために「ちよろりとやられてしまふ」ことがあまりに多いのである。されば友よ、(君は尊敬すべき生活の殉教者だ)、まづ空間を横ぎるこれらの黒い線條の存在に注意しよう。そして、卑しむに堪へたるかれらの機能に対して、心からの敵意を以て警戒しようではないか。

* Voici mes mains qui n'ont pas travaill ―― Verlaine, Sagess e, , 1.

完

富永太郎の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本