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TORENDIA

人魚

本文約7,400字 ・ 読了時間 約15分

あらすじ(AIが作成しました)

山中の池に住む河童は、ある日の夕暮れ、海岸で美しい人魚に遭遇する。人魚の姿を目にした河童は、自身の醜さと宿命に苦悩し、やがて人魚を見た者は死ななければならないという伝説の掟に従い、静かに死を受け入れる。死にゆく河童は、人魚の美しさに魅了された自らの生涯を誇り、人魚の姿を見ようとするあしへい宛てに、人魚が現れる場所を記した地図と自らの最期の心境を綴った手紙を託す。

火野葦平

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草の葉に巻かれた生ぐさい一通の手紙を、私はひらく。

――――――――――

あしへいさん。

また、お手紙さしあげます。先便では失礼いたしました。小説「昇天記」を送ったりなどして、あわよくば芥川賞をと考えたわけでしたが、あとで赤面する思いをいたしました。もう二度と小説などかこうという野心はおこさないことにしました。したがってこんどは新作ができたから見てくれなどというのとはちがいます。どうぞ、あのことはお忘れください。

さて、きょうはどうしてもあなたにお話しをして、御意見をうけたまわりたいことがありますので、とつぜんお手紙をさしあげるわけです。実はじきじきに参上してお話し申しあげるとよいのですが、あの日以来(どの日なのか、それはあとでお話ししますが)頭痛がして起きられませんので、手紙で失礼いたします。ずきんずきん蟀谷がうずき、頭の皿の皮がつっぱってしめつけられるようで、この手紙をかくこともやっとの思いです。したがって頭も混乱しておりますし、文脈もみだれ勝ちになると思いますけれど、なにとぞ御寛恕くださいますよう。わたしがこんな無理をしてまであなたに手紙をかくわけは、わたしの現在のなやみを一日もはやく解決したいのと、そのわたしのなやみというのはあなた以外にはわかってくださるまいかと思うからです。われわれ河童にたいして、あなたほど深い愛情と理解とを示してくれるひとはほかにありませんし、わたしのいまの奇妙ななやみも、あなたなら解決してくださるように思うのです。おいそがしいでしょうが、まず、ひととおりおききください。

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