書簡 山田邦子宛
本文約2,000字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
山田邦子に宛てた書簡において、伊藤野枝は金銭への礼や御歌集への感想、自身の無礼に対する謝罪を綴る。また、雑誌の記念号に向けた執筆依頼や、平塚らいてうとの距離感、そして自身の仕事に対する信念を打ち明ける。友人が不在な中で相手に親近感を抱き、心情を吐露する様子を通して、当時の人間関係や仕事へのひたむきな姿勢、自己の弱さに対する複雑な葛藤を赤裸々に描く。
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宛先 東京代々木 発信地 小石川区指ヶ谷町 青鞜社
お手紙拝見いたしました。おかねもたしかに頂だい致しました。ありがたく御礼申上げます。この間から、あなたにはお目に懸りに伺はふか、それとも手紙でと、いろ/\に考へて居りましたの。先日の永いお手紙に返事を出しそびれまして、さぞお腹立のことと存じ、そのおわびもあり、それからわざ/\お持ち下さいました御歌集についても、まづしい感想でもと思ひながら、今月号に何の御紹介もいたしませんで、そのおわびにもとおもひまして、かたがたとても手紙では申上きれませんし、是非伺はうと思つて居りましたのに、先きにあのやうなお手紙をいただきまして、本当に恐縮いたしました。御歌集については九月にゆる/\少しながく書いて見る気が御座いますので、少し時期はのびますがおゆるしをお願ひする気でをりました、何卒あしからずおゆるし下さい。
いつぞやは私の方でもぜひおわびしなければなりません。あんなにとり乱してをりましたので自分ながら困つて仕舞ひました。そうしてあなたに失礼なおもひをいたしまして、私は後で本当に私こそあなたに済まなくて後悔いたしてをりました。それだのにあなたから反対にあんなお手紙をいただきまして、すつかりどぎまぎして仕舞ひました。そのこと直ぐに御返事を書かうと思ひ/\つい日頃の不精のせいで毎日おもひくらしてゐながら一日一日と遠ざかつて、何となくあなたにはすまない/\と思ひながら出しそびれてそのままになつて仕舞ひました。けれども決して横着な気があつたのでは御座いませんから何卒おゆるし下さいまし。国へは十六七日頃立つつもりで居りますから、出来ればその前に一度お伺ひしたいと思つて居りますが、よくそれもわかりません。何卒あなたにもおあつさおいとひ下さい。