TRENDIA CLASSIC

如何なる星の下に

高見順

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如何なる星の下に生れけむ、われは世にも心よわき者なるかな。暗にこがるるわが胸は、風にも雨にも心して、果敢なき思をこらすなり。花や採るべく、月や望むべし。わが思には形なきを奈何にすべき。恋か、あらず、望か、あらず……。

樗牛

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第一回 心の楽屋

――アパートの三階の、私の佗しい仕事部屋の窓の向うに見える、盛り場の真上の空は、暗くどんよりと曇っていた。窓の近くにあり合わせの紐で引っ張ってつるした裸の電灯の下に、私は窓に向けて、小さな仕事机を据えていたが、その机の前に、つくねんと何をするでもなく、莫迦みたいに坐っていた。できるだけ胸をせばめ、できるだけ息を殺そうと努めているみたいな恰好で両肘を机の上に置いて手を合わせ、その合掌した親指の先に突き出した顎を乗せて、私は濁った空を眺めていた。空というより、空をみつめていたと言った方がよろしいかもしれぬ。空には何も見えないのであったが、眼もまた何も見ていないごとくであった。だが、するうち、異様なものが、――それはちょうど滅多に掃除しない部屋をたまに掃除したりすると、黴菌みたいな形の、長い尻尾を生やした黒い埃がフワフワとそこらに飛び立って驚くことがあるものだが、まるでそんなようなヘンなゴミみたいなものが、盛り場から休みなく立ち上る埃で曇っているように見える向うの空に飛んでいるのが眼にとまった。そのゴミは黴菌のようにごちゃごちゃと集団をなしていたが、見ているうちに細長く延びてへの字を描いた。

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