TRENDIA CLASSIC

らいてう氏に

伊藤野枝

1 / 3

らいてうさま、

お体の工合はどんなですか、私は一週間目から産褥をはなれて居ります、この辺は御大典奉祝の「ドンタク」で大変です、東京もさぞ大変でせう。

漸く帰京が出来るやうになりました。けれども子供の事では随分迷ひました。けれども結局矢張り同じ他手をかりるにしても自分の近くでないとどうしても安神が出来さうにもありませんので連れてかへることにしました。「里子にやるとにくむやうになるから、それではどちらの為にもいけないから」と沢山の例をひいて誰も彼も不賛成をとなへますし、良人も此度は本当に父親らしい愛をもつて子供に対してゐて、矢張り不賛成なのです。私も随分気づよくなつて、たとへ三四ヶ月でも、留守中の停滞してゐる仕事を片づける間丈けでもおいて来やうと思つたのですけれども一日一日とだん/\にさう云ふ決心もいろいろ考へて見ますと不安になつて来ますので捨てました。そして連れてかへることにしました。その代りになるべく時間をとられないやうにしつけやうと思つてゐます。幸ひに、今度の子はおどろくほど手がかゝりませんので、これならと云ふ気もします。一日中下にねてゐますので、おむつの世話とお乳を与りさへすればそれでいゝのです。

今まであがきがとれないやうに苦しむでゐましたけれども全くあれは体のせいだつたと思ひます。長い間働けなかつた反動でこれからはどんなにでも働けるやうに体も気持もかるくなりました。かへりましたら新年号の編輯に全力をつくさうと思つて居ります。長い間留守にした東京の珍らしいこともたのしみの一つです。

伊藤野枝の他の作品

🎧
消息
伊藤野枝 ・ 約2分
🎧
読者諸氏に
伊藤野枝 ・ 約2分
🎧
夫婦喧嘩の功過と責任の所在(アンケート回答)
伊藤野枝 ・ 約1分
🎧
編輯室より(一九一五年五月号)
伊藤野枝 ・ 約5分
🎧
編輯室より(一九一五年七月号)
伊藤野枝 ・ 約3分
🎧
編輯室より(一九一五年四月号)
伊藤野枝 ・ 約4分
🎧
編輯室より(一九一五年一月号)
伊藤野枝 ・ 約4分
🎧
編輯室より(一九一五年三月号)
伊藤野枝 ・ 約1分
🎧
編輯室より(一九一五年二月号)
伊藤野枝 ・ 約2分
🎧
編輯室より(一九一五年六月号)
伊藤野枝 ・ 約6分
🎧
編輯室より(一九一三年七月号)
伊藤野枝 ・ 約3分
🎧
編輯室より(一九一四年一一月号)
伊藤野枝 ・ 約4分