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TORENDIA

らいてう氏に

本文約3,300字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

産褥期を終えた著者が、乳児を連れて帰京する道中の心境と、仕事への意欲を綴る。あわせて岩野泡鳴の日記『愛の争闘』を読み、夫婦の苦悶や愛の在り方について自身の洞察を論じる。知人の訃報に触れ、寂しさを吐露しつつ、帰京後の編集作業への決意を伝える書簡である。

伊藤野枝

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🎧 らいてう氏に / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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らいてうさま、

お体の工合はどんなですか、私は一週間目から産褥をはなれて居ります、この辺は御大典奉祝の「ドンタク」で大変です、東京もさぞ大変でせう。

漸く帰京が出来るやうになりました。けれども子供の事では随分迷ひました。けれども結局矢張り同じ他手をかりるにしても自分の近くでないとどうしても安神が出来さうにもありませんので連れてかへることにしました。「里子にやるとにくむやうになるから、それではどちらの為にもいけないから」と沢山の例をひいて誰も彼も不賛成をとなへますし、良人も此度は本当に父親らしい愛をもつて子供に対してゐて、矢張り不賛成なのです。私も随分気づよくなつて、たとへ三四ヶ月でも、留守中の停滞してゐる仕事を片づける間丈けでもおいて来やうと思つたのですけれども一日一日とだん/\にさう云ふ決心もいろいろ考へて見ますと不安になつて来ますので捨てました。そして連れてかへることにしました。その代りになるべく時間をとられないやうにしつけやうと思つてゐます。幸ひに、今度の子はおどろくほど手がかゝりませんので、これならと云ふ気もします。一日中下にねてゐますので、おむつの世話とお乳を与りさへすればそれでいゝのです。

今まであがきがとれないやうに苦しむでゐましたけれども全くあれは体のせいだつたと思ひます。長い間働けなかつた反動でこれからはどんなにでも働けるやうに体も気持もかるくなりました。かへりましたら新年号の編輯に全力をつくさうと思つて居ります。長い間留守にした東京の珍らしいこともたのしみの一つです。

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