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TORENDIA

三次の鵜飼

本文約2,100字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

三次盆地の四河川が合流する江の川で行われる伝統的な鵜飼を綴る。筆者は長年の都住まいを終え帰郷し、かつて親しんだ鵜飼の光景を遠来の友と共に体験する。しかし、伝統的な麻炬が現代的な灯火へ姿を変え、発電所建設の影響で漁獲量が減少している現状を目の当たりにする。本書は、近代化の波によって失われつつある郷土の風情や鵜飼の歴史的価値を惜しみ、文化が物質文明に圧迫される現状への憂いを描く。

中村憲吉

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山陽、山陰両道の河川は殆ど何れもが中国山脈を分水嶺として、瀬戸内海と日本海とに注いでゐるのにひとり両道第一の長流江の川のみは、その源を山陽道に発し且つその流程の半はこれを通過しながら、下は遠く山陰に入り日本海に流れ去つてゐる。備後の北部が安芸国と境を接し、それに雲石二州の国境が相迫らうとするところに広袤方約二里のいはゆる三次盆地がひらけてゐて、江の川五十余里の水源の大部分は、ここに会する吉田、馬洗、西城、神瀬の四大川によつて涵養されるのである。しかも江の川が石州に入つて流れる廿五里は、全然大谿谷中の流程であるから、河川としての灌田牧水の用は、この上流地域で尽されてゐるわけである。従つて自余は古くから舟楫の便を日本海へ通じてゐるほかは春北風の潮風をこの奥地に迎へ、秋にこの閑郷の錦葉を日本海の波へ送るに過ぎない。ただ季節が夏に向ふときにはこの河の支流といふ支流にはその細渓に至るまで河口から無数の香魚が遡つてその清躯を岩瀬に躍らし、この河一帯の地に活境が俄にひらかれる。この盆地もと三峡川一処に会するが故に、(一川神瀬はやや下流において合する)郷土の騒人はひそかに支那四川省巴東三峡に擬して、いはゆる三巴または巴峡と呼んでゐるが、夏日は白雲豊かに立ち騰つて翠巒は四囲を環擁しその中には天正年間以来の古衛があつて、街路に立てば郭外の灘声を聞くことが出来る。この嵐気とこの香魚と、殊に香魚の漁猟は、この地に古くより伝来する鵜飼によつて一層の興を助くるから、山間三次の行楽は正に夏において極まるといつてよい。鵜飼の三次に行はれた起源は詳かにしないが、口碑によれば、天文永禄のころ毛利氏に亡された尼子浪人が、この地の磧洲に伏屋を結び、活計をたてたのに始まるといひ、当時夜そこからは細燈が漏れ、慈老鳥の啼き声しばしば市人の哀愁をひいたと伝へられる。

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