TORENDIA
太平洋食堂
大石誠之助
TORENDIA
太平洋食堂
本文約530字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
新宮の地に開業を控えた太平洋食堂を舞台に、医師の筆者が店を開くまでの経緯を綴る。単調な日々に飽き足らず、西洋風簡易生活を実践する場として、新聞や雑誌を備え、青年のための健全な娯楽と飲食の提供を目指す。さらに貧民への接待や家庭料理の指導といった地域貢献を掲げ、準備に奔走する筆者の多忙な日々を伝える。
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私事先月の初から急に思ひ立ち、当地に太平洋食堂と云ふ一つのレストラントを設けんとて、俄かに家屋を新築、器具装飾の買入等非常にいそがしく、目下夜を日についで働いて居ります。尤も自分の本業を捨てゝと云ふ程の勇気もまだありませんが、薬売りにをかけた様な今日の医者の仕事があまりに単調にして、面白くなきに厭き果て、何とかしてより多き利益を地方人に与へんものと、図らず之を思ひ附いたのです。茲にレストラントと云ふも、普通の西洋料理店と違ひ、家屋の構造、フヲルニチユーアの選択、内部の装飾等、一々西洋風簡易生活法の研究を目安として意匠をこらし、中に新聞雑誌縦覧処、簡易なる楽器、室内遊戯の器具等を置き、青年の為、清潔なる娯楽と飲食の場処を設くるにつとめつつあります。其他日を定めて貧民を接待する事、家庭料理の稽古をさせる事なども重なる仕事の一つとする筈です。右等の設備も目下九分通りまで出来、ウエター、コツク抔の練習中にて、おそくも本月一日には開業の予定に成りました。雇人に一通りの事を教へる迄は自分がカウンターに立ち、テーブルに侍し、又レンジの前に働かねばならぬ訳で、茲三四ヶ月は八人芸をやらねばならぬ事と思ひます。
〔禄亭君『家庭雑誌』第二巻第一〇号・明治三七年一〇月二日〕
完
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