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TORENDIA

松江印象記

本文約3,100字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

松江の街を訪れた著者が、水路に架かる木造の橋や千鳥城の天主閣といった歴史的建造物への愛惜を綴る。一方で、無分別な近代化や過去の美術品破壊に対する反感を率直に記す。著者は都市が持つ豊かな水の恵みに着目し、建築との調和がこの町に本来あるべき姿であると論じる。古き良き風情と開発の狭間に揺れる都市のありようを描きつつ、水郷としての松江が持つ独自の美意識と将来への展望を提示する随筆である。

芥川龍之介

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🎧 松江印象記 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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一

松江へ来て、まず自分の心をひいたものは、この市を縦横に貫いている川の水とその川の上に架けられた多くの木造の橋とであった。河流の多い都市はひとり松江のみではない。しかし、そういう都市の水は、自分の知っている限りでたいていはそこに架けられた橋梁によって少からず、その美しさを殺がれていた。なぜといえば、その都市の人々は必ずその川の流れに第三流の櫛形鉄橋を架けてしかもその醜い鉄橋を彼らの得意なものの一つに数えていたからである。自分はこの間にあって愛すべき木造の橋梁を松江のあらゆる川の上に見いだしえたことをうれしく思う。ことにその橋の二、三が古日本の版画家によって、しばしばその構図に利用せられた青銅の擬宝珠をもって主要なる装飾としていた一事は自分をしていよいよ深くこれらの橋梁を愛せしめた。松江へ着いた日の薄暮雨にぬれて光る大橋の擬宝珠を、灰色を帯びた緑の水の上に望みえたなつかしさは事新しくここに書きたてるまでもない。これらの木橋を有する松江に比して、朱塗りの神橋に隣るべく、醜悪なる鉄のつり橋を架けた日光町民の愚は、誠にわらうべきものがある。

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