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TORENDIA

仙人

本文約3,200字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

大阪の口入れ屋を訪れた男・権助は、仙人になるための奉公先を執拗に求める。その要望を聞いた狡猾な医者の女房は、二十年間無給で働くことを条件に彼を雇い入れる。やがて二十年が経過し、約束通り仙術の伝授を迫る権助に対し、女房は松の木から両手を放して飛び降りるという到底不可能な難題を課す。しかし、権助はそれを実行し、雲の中へと昇っていく。人間界の欲望と超自然的な現象が交錯する奇譚を描く。

芥川龍之介

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🎧 仙人 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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皆さん。

私は今大阪にいます、ですから大阪の話をしましょう。

昔、大阪の町へ奉公に来た男がありました。名は何と云ったかわかりません。ただ飯炊奉公に来た男ですから、権助とだけ伝わっています。

権助は口入れ屋の暖簾をくぐると、煙管を啣えていた番頭に、こう口の世話を頼みました。

「番頭さん。私は仙人になりたいのだから、そう云う所へ住みこませて下さい。」

番頭は呆気にとられたように、しばらくは口も利かずにいました。

「番頭さん。聞えませんか? 私は仙人になりたいのだから、そう云う所へ住みこませて下さい。」

「まことに御気の毒様ですが、――」

番頭はやっといつもの通り、煙草をすぱすぱ吸い始めました。

「手前の店ではまだ一度も、仙人なぞの口入れは引き受けた事はありませんから、どうかほかへ御出でなすって下さい。」

すると権助は不服そうに、千草の股引の膝をすすめながら、こんな理窟を云い出しました。

「それはちと話が違うでしょう。御前さんの店の暖簾には、何と書いてあると御思いなさる? 万口入れ所と書いてあるじゃありませんか? 万と云うからは何事でも、口入れをするのがほんとうです。それともお前さんの店では暖簾の上に、嘘を書いて置いたつもりなのですか?」

なるほどこう云われて見ると、権助が怒るのももっともです。

「いえ、暖簾に嘘がある次第ではありません。何でも仙人になれるような奉公口を探せとおっしゃるのなら、明日また御出で下さい。今日中に心当りを尋ねて置いて見ますから。」

番頭はとにかく一時逃れに、権助の頼みを引き受けてやりました。が、どこへ奉公させたら、仙人になる修業が出来るか、もとよりそんな事なぞはわかるはずがありません。ですから一まず権助を返すと、早速番頭は近所にある医者の所へ出かけて行きました。そうして権助の事を話してから、

「いかがでしょう? 先生。仙人になる修業をするには、どこへ奉公するのが近路でしょう?」と、心配そうに尋ねました。

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