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TORENDIA

葬儀記

本文約4,000字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

恩師の葬儀に参列した著者は、斎場で執り行われる儀式や弔問客の様子、周囲の友人たちの姿を淡々と見つめる。非日常的な儀式の形式や弔辞に触れる中で、亡くなったという実感が湧かないまま戸惑い、時に涙を流しつつ、葬儀後の虚脱感や疲労感までを克明に綴る。師との別れという厳粛な場面において、当日の風景や周囲との些細なやり取りを交えながら、自身の心情の移ろいを静かに描き出す。

芥川龍之介

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🎧 葬儀記 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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離れで電話をかけて、皺くちゃになったフロックの袖を気にしながら、玄関へ来ると、誰もいない。客間をのぞいたら、奥さんが誰だか黒の紋付を着た人と話していた。が、そこと書斎との堺には、さっきまで柩の後ろに立ててあった、白い屏風が立っている。どうしたのかと思って、書斎の方へ行くと、入口の所に和辻さんや何かが二、三人かたまっていた。中にももちろん大ぜいいる。ちょうど皆が、先生の死顔に、最後の別れを惜んでいる時だったのである。

僕は、岡田君のあとについて、自分の番が来るのを待っていた。もう明るくなったガラス戸の外には、霜よけの藁を着た芭蕉が、何本も軒近くならんでいる。書斎でお通夜をしていると、いつもこの芭蕉がいちばん早く、うす暗い中からうき上がってきた。――そんなことをぼんやり考えているうちに、やがて人が減って書斎の中へはいれた。

書斎の中には、電灯がついていたのか、それともろうそくがついていたのか、それは覚えていない。が、なんでも、外光だけではなかったようである。僕は、妙に改まった心もちで、中へはいった。そうして、岡田君が礼をしたあとで、柩の前へ行った。

柩のそばには、松根さんが立っている。そうして右の手を平にして、それを臼でも挽く時のように動かしている。礼をしたら、順々に柩の後ろをまわって、出て行ってくれという合図だろう。

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