TRENDIA CLASSIC

HUMAN LOST

太宰治

1 / 15

思いは、ひとつ、窓前花。

十三日。 なし。

十四日。 なし。

十五日。 かくまで深き、

十六日。 なし。

十七日。 なし。

十八日。

ものかいて扇ひき裂くなごり哉

ふたみにわかれ

十九日。

十月十三日より、板橋区のとある病院にいる。来て、三日間、歯ぎしりして泣いてばかりいた。銅貨のふくしゅうだ。ここは、気ちがい病院なのだ。となりの部屋の若旦那は、ふすまをあけたら、浴衣がかかっていて、どうも工合いがわるかった、など言って、みんな私よりからだが丈夫で、大河内昇とか、星武太郎などの重すぎる名を有し、帝大、立大を卒業して、しかも帝王の如く尊厳の風貌をしている。惜しいことには、諸氏ひとしく自らの身の丈よりも五寸ほどずつ恐縮していた。母を殴った人たちである。

太宰治の他の作品