本文へ移動
TORENDIA

砂子屋

本文約660字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

書房主・山崎剛平は五周年を迎える夢想家であり、郷土の名を冠した屋号「砂子屋」を掲げて事業を成功させている。その出生の地を屋号とする野心は、かつての紀の國屋文左衛門にも重なる。周囲には高潔な二人の良友と、やさしく助勢する二人の人物が控えており、彼らの支えによって今後の事業運営も安泰であると期待される。山崎は真の困難がこれ以後にあることを自覚し、良友の言に従い自身の夢を成し遂げるよう努める。

太宰治

速度
🎧 砂子屋 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

書房を展開せられて、もう五周年記念日を迎へられる由、おめでたう存じます。書房主山崎剛平氏は、私でさへ、ひそかに舌を卷いて驚いたほどの、ずぶの夢想家でありました。夢想家が、この世で成功したといふためしは、古今東西にわたつて、未だ一つも無かつたと言つてよい。けれども山崎氏は、不思議にも、いま、成功して居られる樣子であります。山崎氏の父祖の遺徳の、おかげと思ふより他は無い。ちなみに、書房の名の砂子屋は、彼の出生の地、播州「砂子村」に由來してゐるやうであります。出生の地を、その家の屋號にするといふのは、之は、なかなかの野心の證據なのであります。郷土の名を、わが空拳にて日本全國にひろめ、その郷土の榮譽を一身に荷はんとする意氣込みが無ければ、とても自身の生れた所の名を、家の屋號になど、出來るものではありません。むかし、紀の國屋文左衞門といふ人も、やはり、そのやうな意氣込みを以て、紀の國の名を日本全國に歌はせたが、あの人は、終りがあまり、よくなかつたやうであります。さいはひ、山崎氏には、淺見、尾崎兩氏の眞の良友あり、兩氏共に高潔俊爽の得難き大人物にして帷幕の陰より機に臨み變に應じて順義妥當の優策を授け、また傍に、宮内、佐伯兩氏の新英惇徳の二人物あり、やさしく彼に助勢してくれてゐる樣でありますから、まづこのぶんでは、以後も不安なかるべしと思ひます。山崎氏も眞の困難は、今日以後に在るといふ事に就いては、既に充分の覺悟をお持ちだらうと思ひます。變らず、身邊の良友の言を聽き、君の遠大の浪漫を、見事に滿開なさるやう御努力下さい。

完

太宰治の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本