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TORENDIA

盲人独笑

本文約10,000字 ・ 読了時間 約21分

あらすじ(AIが作成しました)

徳川中期から末期にかけて備後で活躍した箏曲家、葛原勾当の生涯を紹介する。大正四年に刊行された七百頁に及ぶ膨大な自記日誌を基に、失明という過酷な運命を背負いながらも音律の道を極め、数々の工夫で自立して生きたその独創的な人物像を描く。本書は、勾当の二十六歳の一年間を抜粋し、一人の盲人芸術家が日常の苦難や芸術への情熱、そしてささやかな喜怒哀楽を綴った日記を通じて、その精神の真髄を明らかにする試みである。

太宰治

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よる。まつのこのまより月さやかにみゆると。ひとの申さるるをききてよめる。

はなさきて。ちりにしあとの。このまより

すすしくにほふ。つきのかけかな

まだ。ほかにも。あるなれど。ままにしておけ。

――葛原勾当日記――

はしかき

葛原勾当日記を、私に知らせてくれた人は、劇作家伊馬鵜平君である。堂々七百頁ちかくの大冊である。大正四年に、勾当の正孫、葛原※[#「凵<茲」、355-17]というお人に依って編纂せられ、出版と共に世人を驚倒せしめたものの様であるが、不勉強の私は、最近、友人の伊馬鵜平君に教えられ、はじめて知った次第である。私一個人にとっては、ひどくもの珍しい日記ではあっても、世の読書人には、ああ、あれか、と軽く一首肯を以てあしらわれる普遍の書物であるのかも知れない。そこは、馬鹿の一つ覚えでおくめんも無く押し切って、世の中に我のみ知るという顔で、これから、仔細らしく物語ろうというわけである。

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