TRENDIA CLASSIC

盲人独笑

太宰治

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よる。まつのこのまより月さやかにみゆると。ひとの申さるるをききてよめる。

はなさきて。ちりにしあとの。このまより

すすしくにほふ。つきのかけかな

まだ。ほかにも。あるなれど。ままにしておけ。

――葛原勾当日記――

はしかき

葛原勾当日記を、私に知らせてくれた人は、劇作家伊馬鵜平君である。堂々七百頁ちかくの大冊である。大正四年に、勾当の正孫、葛原※[#「凵<茲」、355-17]というお人に依って編纂せられ、出版と共に世人を驚倒せしめたものの様であるが、不勉強の私は、最近、友人の伊馬鵜平君に教えられ、はじめて知った次第である。私一個人にとっては、ひどくもの珍しい日記ではあっても、世の読書人には、ああ、あれか、と軽く一首肯を以てあしらわれる普遍の書物であるのかも知れない。そこは、馬鹿の一つ覚えでおくめんも無く押し切って、世の中に我のみ知るという顔で、これから、仔細らしく物語ろうというわけである。

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