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TORENDIA

追儺

本文約4,500字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

執筆をめぐる思いや文学的信条を綴る。役所勤めの合間に夜更けの静寂の中で思考を巡らせる語り手は、小説の在り方について考察する。ある日、知人から誘われ初めて訪れた築地の新喜楽で、約束の時間に先んじて待機していたところ、思いがけず赤いちやん/\こを着た老女による豆打の光景に出会う。本書は、その風変わりな追儺の体験や文学的考察を交え、祭礼の歴史的背景や芸術観について綴る随筆である。

森鴎外

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🎧 追儺 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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悪魔に毛を一本渡すと、霊魂まで持つて往かずには置かないと云ふ、西洋の諺がある。

あいつは何も書かない奴だといふ善意の折紙でも、何も書けない奴だといふ悪意の折紙でも好い。それを持つてゐる間は無事平穏である。そして此二つの折紙の価値は大して違つてはゐないものである。ところがどうかした拍子に何か書く。譬へば人生意気に感ずといふやうな、おめでたい、子供らしい、頗る sentimental なわけで書く。さあ、書くさうだなと云ふと、こゝからも、かしこからも書けと迫られる。どうして何を書いたら好からうか。役所から帰つて来た時にはへと/\になつてゐる。人は晩酌でもして愉快に翌朝まで寐るのであらう。それを僕はランプを細くして置いて、直ぐ起きる覚悟をして一寸寐る。十二時に目を醒ます。頭が少し回復してゐる。それから二時まで起きてゐて書く。

昼の思想と夜の思想とは違ふ。何か昼の中解決し兼た問題があつて、それを夜なかに旨く解決した積で、翌朝になつて考へて見ると、解決にも何にもなつてゐないことが折々ある。夜の思想には少し当にならぬ処がある。

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