山羊の歌
本文約14,600字 ・ 読了時間 約30分
あらすじ(AIが作成しました)
春の夕暮れや冬の雨の夜といった情景の中で、汚れた悲しみや倦怠を抱えながら生きる孤独な魂の葛藤を描く詩集。日常の何気ない風景や都会の喧騒、古里への郷愁を通して、喪失感や死への夢、そして何かを絶えず追い求める自身の内面を綴る。完全な幸福を望みつつも現身の世における不公平に直面し、それでもなお生きる意味を問い続ける詩人の姿が、鋭い観察眼と叙情的な言葉によって鮮やかに浮かび上がる。
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初期詩篇
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春の日の夕暮
トタンがセンベイ食べて
春の日の夕暮は穏かです
アンダースローされた灰が蒼ざめて
春の日の夕暮は静かです
吁! 案山子はないか――あるまい
馬嘶くか――嘶きもしまい
ただただ月の光のヌメランとするまゝに
従順なのは 春の日の夕暮か
ポトホトと野の中に伽藍は紅く
荷馬車の車輪 油を失ひ
私が歴史的現在に物を云へば
嘲る嘲る 空と山とが
瓦が一枚 はぐれました
これから春の日の夕暮は
無言ながら 前進します
自らの 静脈管の中へです
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月
今宵月はいよよ愁しく、
養父の疑惑に瞳をる。
秒刻は銀波を砂漠に流し
老男の耳朶は螢光をともす。
あゝ忘られた運河の岸堤
胸に残つた戦車の地音
銹びつく鑵の煙草とりいで
月は懶く喫つてゐる。
それのめぐりを七人の天女は
趾頭舞踊しつづけてゐるが、
汚辱に浸る月の心に
なんの慰愛もあたへはしない。
遠にちらばる星と星よ!
おまへの※手[#「曾+りっとう」、17-6]を月は待つてる
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サーカス
幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
冬は疾風吹きました
幾時代かがありまして
今夜此処での一と殷盛り
今夜此処での一と殷盛り
サーカス小屋は高い梁
そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ
頭倒さに手を垂れて
汚れ木綿の屋蓋のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
それの近くの白い灯が
安値いリボンと息を吐き
観客様はみな鰯
咽喉が鳴ります牡蠣殻と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
屋外は真ッ闇 闇の闇
夜は劫々と更けまする
落下傘奴のノスタルヂアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
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春の夜
燻銀なる窓枠の中になごやかに
一枝の花、桃色の花。
月光うけて失神し
庭の土面は附黒子。
あゝこともなしこともなし
樹々よはにかみ立ちまはれ。
このすゞろなる物の音に
希望はあらず、さてはまた、懺悔もあらず。
山虔しき木工のみ、
夢の裡なる隊商のその足竝もほのみゆれ。
窓の中にはさはやかの、おぼろかの
砂の色せる絹衣。
かびろき胸のピアノ鳴り
祖先はあらず、親も消ぬ。
埋みし犬の何処にか、
蕃紅花色に湧きいづる
春の夜や。
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朝の歌
天井に 朱きいろいで