TRENDIA CLASSIC
鴉片
芥川龍之介
1 / 4
クロオド・フアレエルの作品を始めて日本に紹介したのは多分堀口大学氏であらう。僕はもう六七年前に「三田文学」の為に同氏の訳した「キツネ」艦の話を覚えてゐる。
「キツネ」艦の話は勿論、フアレエルの作品に染みてゐるものは東洋の鴉片の煙である。僕はこの頃矢野目源一氏の訳した、やはりフアレエルの「静寂の外に」を読み、もう一度この煙に触れることになつた。尤もこの「静寂の外に」は芳しい鴉片の匂の外にも死人の匂をも漂はせてゐる。「ポオとボオドレエル」兄弟商会の造つた死人の匂をも漂はせてゐる。
「おや、聞えたぞ。いや、空耳だらう。己にはわからない。死人の土地から洩れて来るにしてはあんまり音が大き過ぎる。一体ここで物の割れる音なんかするわけがない。泥溜の中で棺桶が嚔をする。――一枚の板が揺ぶられる。頑丈な釘がうちつけてあるのを恐しい音をさせて軋ませる。……」
これはポオの「Premature Burial」が大西洋の彼岸に伝へた幾多の反響の一つである。が、そんなことはどうでも好い。僕にちよつと面白かつたのは下に引用する一節である。――
「ところで已に仏蘭西の土地で阿片を造らうとして失敗をつづけ乍らさまざまに苦心した。東京から持つて来た罌粟の種子を死骸で肥えた墓地に植ゑて見ると思ひの外に成績がよくてその特徴を発揮させることが出来た。今では、その毒汁で脹らんだ芥子坊主を切りさへすれば、望み通りに茶色の涙のやうなものがぼろぼろと滴り落ちて来る。……」
鴉片に死人を想はせるのはフアレエルの作品に始まつたのではない。僕はこの頃漫然と兪の「右台仙館筆記」を読んでゐるうちにかう云ふ俗伝は支那人の中にもあつたと云ふことを発見した。それは同書の中に掲げた「賈慎庵」の話に出合つたからである。
芥川龍之介の他の作品
TRENDIA CLASSIC
内田百間氏
芥川龍之介
内田百間氏
芥川龍之介 ・ 約2分
TRENDIA CLASSIC
剛才人と柔才人
と
芥川龍之介
剛才人と柔才人と
芥川龍之介 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
「支那游記」自
序
芥川龍之介
「支那游記」自序
芥川龍之介 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
「侏儒の言葉」
の序
芥川龍之介
「侏儒の言葉」の序
芥川龍之介 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
装幀に就いての
私の意見
芥川龍之介
装幀に就いての私の意見
芥川龍之介 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
出来上った人
芥川龍之介
出来上った人
芥川龍之介 ・ 約2分
TRENDIA CLASSIC
夏目先生と滝田
さん
芥川龍之介
夏目先生と滝田さん
芥川龍之介 ・ 約2分
TRENDIA CLASSIC
二人の紅毛畫家
芥川龍之介
二人の紅毛畫家
芥川龍之介 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
亦一説?
芥川龍之介
亦一説?
芥川龍之介 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
無題
芥川龍之介
無題
芥川龍之介 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
森先生
芥川龍之介
森先生
芥川龍之介 ・ 約2分
TRENDIA CLASSIC
臘梅
芥川龍之介
臘梅
芥川龍之介 ・ 約1分