TRENDIA CLASSIC

思ひ出

太宰治

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一章

黄昏のころ私は叔母と並んで門口に立つてゐた。叔母は誰かをおんぶしてゐるらしく、ねんねこを着て居た。その時の、ほのぐらい街路の靜けさを私は忘れずにゐる。叔母は、てんしさまがお隱れになつたのだ、と私に教へて、生き神樣、と言ひ添へた。いきがみさま、と私も興深げに呟いたやうな氣がする。それから、私は何か不敬なことを言つたらしい。叔母は、そんなことを言ふものでない、お隱れになつたと言へ、と私をたしなめた。どこへお隱れになつたのだらう、と私は知つてゐながら、わざとさう尋ねて叔母を笑はせたのを思ひ出す。

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