悶悶日記
本文約1,500字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
郵便受箱に蛇を投げ入れられるという不穏な出来事から始まり、経済的な困窮や家族からの叱責、体調不良、そして周囲との人間関係の葛藤に翻弄される売れない作家の日常を綴る。絶え間ない借金と孤独、不眠や幻覚に苦しみながらも、執筆活動に希望を見出し、短篇集の校正や新たな小説の完成へ向かう日々を描く。自身の弱さと恥に正面から向き合い、追い詰められた精神状態の中で書き上げられた、苦悩と創造の記録である。
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月 日。
郵便受箱に、生きている蛇を投げ入れていった人がある。憤怒。日に二十度、わが家の郵便受箱を覗き込む売れない作家を、嘲っている人の為せる仕業にちがいない。気色あしくなり、終日、臥床。
月 日。
苦悩を売物にするな、と知人よりの書簡あり。
月 日。
工合いわるし。血痰しきり。ふるさとへ告げやれども、信じて呉れない様子である。
庭の隅、桃の花が咲いた。
月 日。
百五十万の遺産があったという。いまは、いくらあるか、かいもく、知れず。八年前、除籍された。実兄の情に依り、きょうまで生きて来た。これから、どうする? 自分で生活費を稼ごうなど、ゆめにも思うたことなし。このままなら、死ぬるよりほかに路がない。この日、濁ったことをしたので、ざまを見ろ、文章のきたなさ下手くそ。
檀一雄氏来訪。檀氏より四十円を借りる。
月 日。
短篇集「晩年」の校正。この短篇集でお仕舞いになるのではないかしらと、ふと思う。それにきまっている。
月 日。
この一年間、私に就いての悪口を言わなかった人は、三人? もっと少ない? まさか?
月 日。
姉の手紙。
「只今、金二十円送りましたから受け取って下さい。何時も御金のさいそくで私もほんとに困って居ります。母にも言うにゆわれないし、私の所からばかりなのですから、ほんとうにこまって居ります。母も金の方は自由でないのです。(中略。)御金は粗末にせずにしんぼうして使わないといけません。今では少しでも雑誌社の方から、もらって居るでしょう。あまり、人をあてにせずに一所けんめいしんぼうしなさい。何でも気をつけてやりなさい。からだに気をつけて、友だちにあまり附き合ない様にしたほうが良いでしょう。皆に少しでも安心させる様にしなさい。(後略。)」
月 日。
終日、うつら、うつら。不眠が、はじまった。二夜。今宵、ねむらなければ、三夜。
月 日。
あかつき、医師のもとへ行く細道。きっと田中氏の歌を思い出す。このみちを泣きつつわれの行きしこと、わが忘れなば誰か知るらむ。医師に強要して、モルヒネを用う。
ひるさがり眼がさめて、青葉のひかり、心もとなく、かなしかった。丈夫になろうと思いました。
月 日。