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TORENDIA

変遷その他

本文約2,900字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

世態の変遷、文壇における短歌や俳句の扱われ方に対する批評、そして自身の読者との交流などを綴る随筆集。著者は身の回りの変化から文明の進歩を考察するほか、小説家が軽視されがちな文壇の風潮に異議を唱える。さらに、他作家と比較した際の自身の読者層の特徴を独自の視点で分析し、文学を通じた人間模様や自身の執筆環境を軽妙な語り口で描き出す。大正末期の知的な日常と作家としての意識が反映された作品群である。

芥川龍之介

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🎧 変遷その他 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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変遷

万法の流転を信ずる僕と雖も、目前に世態の変遷を見ては多少の感慨なきを得ない。現にいつか垣の外に「茄子の苗や胡瓜の苗、……ヂギタリスの苗や高山植物の苗」と言ふ苗売りの声を聞いた時にはしみじみ時好の移つたことを感じた。が、更に驚いたのはこの頃ふと架上の書を縁側の日の光に曝した時である。僕は従来衣魚と言ふ虫は決して和本や唐本以外に食はぬものと信じてゐた。けれども千九百二十五年の衣魚は舶来本の背などにも穴をあけてゐる。僕はこの衣魚の跡を眺めた時に進化論を思ひ、ラマルクを思ひ、日本文化の上に起つた維新以後六十年の変遷を思つた。三十世紀の衣魚はことによると、樟脳やナフタリンも食ふかも知れない。

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