TRENDIA CLASSIC

瘢痕

平出修

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躍場が二つもある高い階段を軽くあがつて、十六ばかりの女給仕が社長室の扉をそつと叩いた。

「よろしい。」社長の松村初造はちよいと顔を蹙めたが、すぐ何気ない風になつて、給仕を呼入れた。

「あの、田代さんからお電話でございますが。」

「うむ。」

「只今からお伺ひいたしたいんでございますが……。」

「居ると云つたか。僕が、ここに。」松村はうるささうに中途で給仕の詞を遮つた。

「いいえ。あの……」給仕はおづおづしながら、

「何とも申しません。お待ち下さいと申しまして……。」

「ぢや。」松村は考へて、

「まだ会社へお出かけなりませんて、さう云うてね……。」終の詞をやや優しく云つたので、給仕はほつとして出て行かうとした。

「ああ、おい。」松村は給仕を呼びもどした。

「それからね、桑野が居つたら、ここへ来いつて云ふんだ。」

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