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TORENDIA

瘢痕

本文約19,800字 ・ 読了時間 約40分

あらすじ(AIが作成しました)

松村初造は、友人白川奨の仲介で進む埋立工事の事業資金調達を巡り、同僚の奥田から裏書の承諾が得られず苦慮している。一方、桑野は松村の私生活の乱れを憂慮し、妻を交えた複雑な人間関係に直面する。実業家として利害を計算し、打算的に立ち回る松村を中心に、仕事上の紛糾と男女の情愛、そして隠された真実を求めて揺れ動く人々の姿を描く。

平出修

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躍場が二つもある高い階段を軽くあがつて、十六ばかりの女給仕が社長室の扉をそつと叩いた。

「よろしい。」社長の松村初造はちよいと顔を蹙めたが、すぐ何気ない風になつて、給仕を呼入れた。

「あの、田代さんからお電話でございますが。」

「うむ。」

「只今からお伺ひいたしたいんでございますが……。」

「居ると云つたか。僕が、ここに。」松村はうるささうに中途で給仕の詞を遮つた。

「いいえ。あの……」給仕はおづおづしながら、

「何とも申しません。お待ち下さいと申しまして……。」

「ぢや。」松村は考へて、

「まだ会社へお出かけなりませんて、さう云うてね……。」終の詞をやや優しく云つたので、給仕はほつとして出て行かうとした。

「ああ、おい。」松村は給仕を呼びもどした。

「それからね、桑野が居つたら、ここへ来いつて云ふんだ。」

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