チャアリイは何処にいる
本文約15,300字 ・ 読了時間 約31分
あらすじ(AIが作成しました)
フィラデルフィアの富豪ロス氏の邸宅から、七歳の兄ウォルタアと三歳の弟チャアリイが忽然と姿を消す。警察とロス氏による大規模な捜索の末、兄は発見されるが弟の行方は知れず、後に誘拐犯たちも死を遂げる。唯一の情報を握っていた犯人が逝去したことで、幼いチャアリイの消息は永遠の謎となる。本作は、実在の誘拐事件を題材に、長年我が子の帰りを待ち続けた両親の苦悩と、現在も所在不明である少年の運命を追う事実物語である。
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七月一日だった。
夏の早いアメリカの東部である。四日の独立祭を目のまえに控えて、フィラデルフィアの町は、もう襲いかけた炎熱の下に喘いでいた。
人事的には、この独立祭からアメリカじゅう一せいに夏になるのだ。男は、言いあわしたように麦藁帽をかぶりだし、女は、一夜のうちに白い軽装に変わる。アメリカの生活で楽しい年中行事の一つであるいわば衣更えの季節だった。
このフィラデルフィアの第一流の住宅区域に、ロス氏という有力な実業家が、宮殿のように堂々たる大邸宅を構えて住んでいる。ちょうどこの時、ロス夫人は、来らんとする夏を逃げて、早くも田舎の別荘へ避暑に行っていたが、この問題の一日の夕方、ロス氏が、市の中心にある自分の会社から帰って来ると、二人の愛息に付けてある若い保母が、玄関に立って、主人の帰宅を待ちながら泣いていた。
ひどくとり乱している。訊いてみると、その二人の息子が、午後から姿を消して、邸の内外どこを捜してもいないというのである。ふたりの男の子は、上をウォルタアといって七歳、弟のチャアリイは三つで、どちらもロス夫妻が眼に入れても痛くない、愛くるしい子供たちだった。兄弟仲もよく、いつも一緒に跳ねまわって遊んでいた。
はじめロス氏は、保母が責任を感じて狼狽しているわりに、この報せを軽く受け取って、暢気に聞き流した。
「なあに、子供のことだから、遊びにほおけて遠っ走りをしたのだろう。迷児になっているのかもしれないが、たいしたことはないさ。もうすこし待ってみて帰って来なければ、警察に頼んで捜してもらおう。そうすれば、すぐ見つかるにきまってる。」
こうかえってロス氏が保母を慰めるような口調だった。