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TORENDIA

校長三代

本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

弘前高等學校に赴任した三代の校長の姿と、それぞれの個性を追想する。植木を愛でた黒金、政党政治家風の振る舞いで校内改革を強行し、のちに校友会費を流用して騒動を引き起こした鈴木信太郎、そして菊池幽芳の弟であり軍事教練で照れくさそうな様子を見せた戸澤。著者は、自身の学生時代に出会ったこれら三人の校長それぞれの教育現場での振る舞いや、彼らを巡る出来事を叙情的な筆致で綴る。

太宰治

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私が弘前の高等學校にはひつてその入學式のとき、訓辭した校長は、たしか黒金といふ名前であつたと記憶してゐる。金椽の眼鏡を掛け、痩身で、ちよつと氣取つた人であつた。高田早苗に似てゐた。植木が好きで、學校のぐるりに樣々の植木を、優雅に配置し、ときどき、ひとり、兩手をうしろに組んで、その植木の間を、ゆつくり縫つて歩いてゐた。

間もなくゐなくなつて、そのかはりに來たのは、鈴木信太郎氏である。このひとの姓名は、はつきり覺えてゐる。このひとはちよつと失敗した。いまは、どうして居られるか。政治家肌のひとで、多少、政黨にも關係があつたやうである。就任早々、一週を五日として、六日目毎に休日を與へ、授業も毎日午前中だけにしたい、それゆゑに生徒が怠けるとは思はれない。自分は生徒を信じてゐる、といふやうな感想を述べ、大いに生徒たちを狂喜させたが、これは、實現されなかつた。結局、感想にすぎなかつた。けれども他のことを實行した。

一校を一國家と看做し、各クラスより二名づつの代議士を選擧し、學校職員ならびに校友會委員は、政府委員となり、ときどき議會をひらいて、校政を審議するといふやうな謂はば維新を斷行した。

校長自身は、さしづめ一國の宰相とでもいふやうなところであつた。代議士選擧は、さかんであつた。學校の廊下には、べたべた推薦のビラが張られて、選擧事務所なども、ものものしく、或るものは校門の下に立つて、登校の生徒ひとりひとりに名刺を手交し、よろしくたのみます、といつて低くお辭儀をして、或るものは、中學校の先輩といふ義理のしがらみに依つて、後輩を威嚇し、饗應、金錢、などといふばかな噂さへ立つた。

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