本文へ移動
TORENDIA

鷲の巣

本文約2,800字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

高い懸崖に囲まれた小村エンドレゴォルでは、村を脅かす鷲の巣を破壊することが青年たちの悲願となっている。村一番の青年ライフは、周囲の制止や許婚の懇願を振り切り、皆が見守る中で険しい岩壁を登り始める。しかし、登攀の途中で手足を滑らせ、懸崖から転落する。村の長老は今回の無謀な挑戦を振り返りつつ、誰にも届かない場所にある鷲の巣の存在に思いを馳せる。

ビョルンステェルネ・ビョルンソン Bjornstjerne Bjornson

速度
🎧 鷲の巣 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 4

ビョルンステェルネ・ビョルンソン Bjrnstjerne Bjrnson (1832-1910)。イプセンと並び稱せられるノールウェイの文豪。牧師の子と生れ、詩に、劇に、ジャーナリズムに又演説に、その一生は實にあらゆる方面に於ける活動の連續であつた。けれども、彼は一面ラヂカリストなると共に、他面、守舊的であつた。文學に於て又思想に於て、彼は牧歌的、道義的で、何處かに説教を藏してゐる。

『鷲の巣』はその短かさに反比例して、よく彼の文學者としての全貌をあらはしてゐる。

[#以上、宮原晃一郎による解説]

[#改ページ]

高い懸崖に圍まれて、淋しく横はる小村はエンドレゴォルと稱ばれた。村が立つてゐる地面は平らで、肥沃であつた。その中を一筋の廣い川が山から流れ落ちて、貫き通つてゐた。此の川は村から遠くない、向ふの方に見えてゐる湖に注いでゐるのだつた。

昔此の湖に一隻のボートに乘つて一人の者がやつて來た。其者こそは此の谷間に開墾を始めた最初の人間であつた。その名はエンドレであつた。現在の村の住民はその子孫である。

二三の者は言つた――エンドレは人殺しをして此處へ逃げ込んだのだ。それだから村民の顏が陰慘に見えるのだと。他の者は反對して言ひ張つた――それは懸崖の負ふべき罪だ。ヨハネ祭(中夏)の頃でさへ、もう午後五時には日の光は谷の中にさして來ないのだからと。

村の上の方に鷲の巣が一つ懸つてゐた。それは山の岩角についてゐた。鷲が卵をかへしにかゝると、誰でもこれを見ることができた。けれども、一人として其の巣にとゞいたものはなかつた。

鷲は村の上を飛び翔つて、時には仔羊を、又時には仔山羊を襲つた。一度などは小さな子供をさらつて行つたこともあつた。だから鷲がその巣を岩角にかけてゐるうちは、安心がならなかつた。

村人の間に、こんな話があつた。昔、その巣にとゞいて、滅茶苦茶にこはした二人の兄弟があつたさうだが、近年、それにとゞいた者は一人もないといふことだつた。

村で人が二人寄ると、鷲の巣の話が出て、上を見あげるのだつた。

同じジャンルの朗読つきの本