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TORENDIA

金魚

本文約4,000字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

青山の裏町に住む作家の男と、その妻のおふさは極貧の生活を送っていた。男は執筆活動の過酷なプレッシャーから、自身を献身的に支える妻に当たり散らし、苦しめる日々を繰り返す。ある小雨の日、体調を崩していたおふさは金魚を買いに出かけるが、途中で激しい苦痛に襲われ帰宅する。帰宅後、耐えきれず吐血する妻の姿に男は激しく動揺する。本作は、自らの業と貧困に追い詰められながらも、深く愛し合った夫婦の悲劇的な追憶を描く。

鈴木三重吉

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🎧 金魚 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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町に金魚を賣る五月の、かうした青い長雨の頃になると、しみ/″\おふさのことが思ひ出される。今日も外にはしと/\と蜘蛛の糸のやうな小雨が降る。金魚の色ばかりを思ひ浮べても物淋しい。おふさを思へばうら悲しい。

二人はあの青山の裏町の、下二た間と二階一と間だけの小さい家に住んでゐた。

はじめて世に出す作にかゝつてゐた私は毎晩夜學へ講義に行く外は、晝はいちんち二階に籠つて一字/\に血も黒くなるやうな思ひをして、一つところを消したり直したりばかりして、狂人のやうになつて書いてゐた。おふさはその間下でたつた一人、悄んぼりと、下手な手習ひなぞをして坐つてゐた。今から思へばそれも半分は體の惡いせゐだつたのだらうけれど、おふさはその頃は所つ中はき/\しない顏ばかりして、欝ぎ込んでゐた。

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