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TORENDIA

善悪両面鼠小僧

本文約10,100字 ・ 読了時間 約21分

あらすじ(AIが作成しました)

文政末年の江戸。芝二本榎の細川侯下邸に忍び込んだ泥棒の鼠小僧こと和泉屋次郎吉は、美しき乃信姫に見とれて見咎められる。その場を脱した次郎吉は、変相薬により姿を変え、善悪両面の狭間で翻弄される数奇な運命を辿る。与力の中條軍十郎との奇妙な対峙や、姫との因縁を通じて、次郎吉の内に潜む善心と悪心の葛藤が描かれる。

国枝史郎

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乃信姫に見とれた鼠小僧

「曲者!」という女性の声。

しばらくあって入り乱れる足音。

「あっちでござる!」

「いやこっちじゃ!」

宿直の武士の犇き合う声。

文政末年春三月、桜の花の真っ盛り。所は芝二本榎、細川侯の下邸だ。

邸内に大きな松の木がある。その一本の太い枝に一人の小男が隠れていた。豆絞の手拭スットコ冠り、その奥から眼ばかり光らせ高縁の辺りを見詰めている。腕を組み体を縮め足を曲げて胸へ着けた様子、ざっと針鼠と云った塩梅、これが曲者当人である。

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