或る農学生の日誌
本文約10,200字 ・ 読了時間 約21分
あらすじ(AIが作成しました)
農学校に通う生徒が、三年間の日常と農業への真摯な取り組みを綴る日誌。学校での実習や測量の学び、修学旅行での北国への旅を通じ、作者は農業の実践と向き合う。厳しい旱魃や度重なる自然の脅威に直面し、労働や肥料の管理に苦心しながらも、農業という地味で真面目な仕事に対する誇りと、卑怯な行いに対する憤りを抱き続ける。日々を懸命に生きる若者の揺れ動く心情と、農村で働く現実をありのままに描く。
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序
ぼくは農学校の三年生になったときから今日まで三年の間のぼくの日誌を公開する。どうせぼくは字も文章も下手だ。ぼくと同じように本気に仕事にかかった人でなかったらこんなもの実に厭な面白くもないものにちがいない。いまぼくが読み返してみてさえ実に意気地なく野蛮なような気のするところがたくさんあるのだ。ちょうど小学校の読本の村のことを書いたところのようにじつにうそらしくてわざとらしくていやなところがあるのだ。けれどもぼくのはほんとうだから仕方ない。ぼくらは空想でならどんなことでもすることができる。けれどもほんとうの仕事はみんなこんなにじみなのだ。そしてその仕事をまじめにしているともう考えることも考えることもみんなじみな、そうだ、じみというよりはやぼな所謂田舎臭いものに変ってしまう。
ぼくはひがんで云うのでない。けれどもぼくが父とふたりでいろいろな仕事のことを云いながらはたらいているところを読んだら、ぼくを軽べつする人がきっと沢山あるだろう。そんなやつをぼくは叩きつけてやりたい。ぼくは人を軽べつするかそうでなければ妬むことしかできないやつらはいちばん卑怯なものだと思う。ぼくのように働いている仲間よ、仲間よ、ぼくたちはこんな卑怯さを世界から無くしてしまおうでないか。
一九二五、四月一日 火曜日 晴