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TORENDIA

伊賀、伊勢路

本文約2,100字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

東京の刺激に倦み、自然の情趣と寂しさを求めて旅に出る筆者が、晩秋から初冬にかけての伊勢、伊賀、大和路を巡る様子を描く。室内旅行で地図を眺めて空想を膨らませた筆者は、名古屋を経て関へ向かい、筆捨の溪やかつての鈴鹿峠を越え、俳人・松尾芭蕉の故郷である上野や名張を目指す。旅先で出会う風景や歴史的な足跡に触れ、自身の心象を重ね合わせながら風雅な旅の情景を綴る紀行文。

近松秋江

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🎧 伊賀、伊勢路 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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私には、また旅を空想し、室内旅行をする季節となつた。東京の秋景色は荒寥としてゐて眼に纏りがない。さればとて帝劇、歌舞伎さては文展などにさまで心を惹かるゝにもあらず、旅なるかな、旅なるかな。芭蕉も

憂きわれを淋しがらせよ閑古鳥  といひ、また

旅人と我名呼ばれん初しぐれ  ともいつたが、旅にさすらうて、折にふれつゝ人の世の寂しさ、哀れさ、またはゆくりなく湧き來る感興を味はふほど私にとつての慰藉はない。東京は、私には、あまりに刺戟が強く、あまりに賑かすぎて、心はいつも皮相ばかりを撫でてゐるやうである。東京にゐると、文筆のわざさへひたすら枯淡なる事務のやうになつて、旅にゐるときのやうに自然の情趣が湧かない。私の魂魄は今、晩秋初冬の夜々東京の棲家をさまよひ出でて、遠く雲井の空をさして飛んでゐる。

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