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TORENDIA

(私はさきごろ)

本文約1,500字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

岩手の山中に身を置きミケランジェロの研究に没頭した著者が、自身の心象風景と重ね合わせながら、この芸術家の真の姿を論じる。法王庁の宗教的権威や伝統的な信仰の枠組みに安住せず、自らの内なる美の次元で生き抜いた彫刻家・画家の本質に迫る。伝説的主題を創作の拠り所としながらも、自然の理法が示す比例均衡の美を追求し続けた孤高の人間の核心を、執筆当時の自身の心的状態を交えて解き明かす。

高村光太郎

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🎧 (私はさきごろ) / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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私はさきごろミケランジェロの事を調べたり、書いたりして数旬を過ごしたが、まったくその中に没頭していたため、この岩手の山の中にいながらまるで日本に居るような気がせず、朝夕を夢うつつの境に送り、何だか眼の前の見なれた風景さえ不思議な倒錯を起して、小屋つづきの疎林はパリのフォンテンブロオの森かと思われ、坂の上の雪と風とに押しひしがれてそいだような形になっている松の木はあのローマの傘松を聯想させ、見渡すかぎりの清水野のゆるい起伏はローマ郊外のいわゆるカムパーニヤ ロマーノの展望にさえ見えるのであった。炉辺で眼をつぶると、何だかアルノオ河の河岸の石だたみや、ポンテ ヴェッキオの橋が近所にあるように思われたり、遠くの空にローマのサン ピエトロの円屋根が聳えていたりする。今は一九五〇年の冬のはじめで、ここは日本東北地方の山の中だという現実がうそのように思えたりした。

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