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TORENDIA

小刀の味

本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

彫刻家が自らの手足のように愛し、大切にする小刀への執着と、その道具が持つ本質的な魅力を綴る。幼少期に親しんだ名工による手作りの品と、大量生産品との質感や光り方の違いを詳述する。刃金と地金の絶妙な調和が生む品位や、道具との対話を通じて心身を研ぎ澄ます為事場の情景を鮮やかに描き出し、使い手と道具が一体となる瞬間の悦びや、手仕事の道具に対する深い敬意と愛惜の情を論じる。

高村光太郎

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🎧 小刀の味 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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飛行家が飛行機を愛し、機械工が機械を愛撫するように、技術家は何によらず自分の使用する道具を酷愛するようになる。われわれ彫刻家が木彫の道具、殊に小刀を大切にし、まるで生き物のように此を愛惜する様は人の想像以上であるかも知れない。幾十本の小刀を所持していても、その一本一本の癖や調子や能力を事こまかに心得て居り、それが今現にどうなっているかをいつでも心に思い浮べる事が出来、為事する時に当っては、殆ど本能的に必要に応じてその中の一本を選びとる。前に並べた小刀の中から或る一本を選ぶにしても、大抵は眼で見るよりも先に指さきがその小刀の柄に触れてそれを探りあてる。小刀の長さ、太さ、円さ、重さ、つまり手触りで自然とわかる。ピヤニストの指がまるでひとりでのように鍵をたたくのに似ている。桐の道具箱の引出の中に並んだ小刀を一本ずつ叮嚀に、洗いぬいた軟い白木綿で拭きながら、かすかに錆どめの沈丁油の匂をかぐ時は甚だ快い。

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