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TORENDIA

フランソア・コッペ訪問記

本文約7,900字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

フランスの詩人フランソア・コッペの別荘『苺園』を訪れた著者が、その生活や人柄を綴る。マンドルの自然豊かな地で、愛犬や山羊など多くの動物と共に暮らすコッペは、狩猟家のような装いで客を迎え、愉快に持論や昔話を語る。繊細な感性と巴里っ子らしい単純な陽気さを併せ持つ詩人の、誠実な労働と隠遁生活への満足、そして往時の交流を振り返る様子を描写し、書く時と話す時で異なる表情を見せるその多面的な人物像を伝える。

堀口九萬一

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僕が詩人フランソア・コッペをマンドルの田舎に訪問したのは、十月の晴々した日であつた。僕は以前からこの別荘の名は知ってゐたし。また誰が尋ねて行つても歓迎されると云ふことも、聞いてゐた。新聞記者などがコッペの閑居『苺園』の事を語る時にはいつも愉快さうな調子で話してゐたので。

……そこで僕達は出発した。僕達といふのは学友のシャルル・ブノワが同行したからである。ブノワはコッペの縁戚で且つ今日の往訪は予ねて先生に打合せ済みだつた。午前十時にヴァンセンヌの停車場から出発した。遠方の田舎へでも旅行するやうな意気込みで出掛けたのだつた。而して実の処マンドルは巴里近郊――日曜日には女優や女店員などが愛人と手を携へて散歩したり、学生などが短艇を漕いだり、その路傍には香の高い花が植ゑてあつたり、遠くには高い塔が見えたりなどして、宛然芝居の書き割のやうな巴里の近郊――とは全く趣を異にした処である。マンドルは百姓家が散らばつてゐて、馬糞肥料が積んであつて、群鶏が土をほじくつてゐる本当の田舎村である。而して村はづれの旅宿の看板には今尚、古式に則つて柊の枝が結び付けてある。

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