TRENDIA CLASSIC

戯画

北條民雄

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彼女は非常に秀れた頭脳を持つてゐたのだと僕は思ふよ、これといふ理由はないのだけれど。僕はなんとなく、神秘的なものを感じてならないんだ。

その少女のことを語り始めようとする時、多田君はきつとかういふ前置をする習慣があつた。今年二十四の青年で、病気になつてから詩を書いてゐた。私は多田君とかなり親しい間柄で、その少女のことはもう幾度となく聴かされた。最初の一二回は相当面白く聴かれたが、やはり幾度も重なつて来ると、それから少女の様子を見に行つたんだらうなどと半畳を入れて彼を怒らせたりするやうになつた。すると彼は意外な程腹を立てて私をおろおろさせるのであつた。実際彼は何回くり返しても、更に新しい感激を自ら覚えるらしかつた。そのうち私もすつかりその物語を覚えてしまつたが、通俗小説にでもありさうな事柄なのであまり興味を有てなかつたが、多田君はさうでないと強く言ひ張つてきかなかつた。少女は名をみえと言つて、多田君はこの名前も大変気に入つてゐた。

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