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TORENDIA

邂逅

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

高等科二年の多吉は、夕方の帰路で友人たちからの呼びかけを無視し、一人で逃げるように駆け出していく。町はずれの小川までたどり着いた彼は、沈みゆく夕陽に照らされた山々や雲を眺める。見慣れたはずの風景の中に今まで感じたことのない寒々とした美しさと異質なものを覚えた多吉は、自身の心中に流れる深い不安と孤独を抱えたまま、その場に力なくしゃがみ込む。

北條民雄

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🎧 邂逅 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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高等科二年の多吉は、ある夕方、校門を出るとただ一人きりで家路に向つた。学友たちは幾つかのかたまりになつてそれぞれの方向へ別れ、何か大声で議論し合つてゐるのもあれば、また軍歌を合唱してゐる組もあつた。多吉はちらりと彼等の方に視線を移したが、見てはならぬものを見たかのやうにすぐ顔を外向けると、幾分頭を垂れ気味にして足を早めた。彼は何事か深く考へ込んでゐた。足を早めたとたんに、道路に突き出た石の頭に躓いて二三歩よろめいたが、それにも気づかぬくらゐであつた。

「やあい、多吉!」

と呼ぶ声がその時背後から聴えた。彼からはもうかなり離れた一団の中から叫んだのに違ひなかつた。三郎ちやんだな、と多吉はすぐに悟つた。あの声は三郎に違ひない、と彼は再び頭の中で考へたが、返事はしなかつた。すると、

「タア吉ちやあん。」

と呼ぶ声がまた背中にぶつかつて来た。

彼はやつぱり返事はしなかつたが、今度はちよつと立停つて振り返つた。

「明日あそびに来いよ!」と、その声がまた叫んだ。「山へ行かうよ!」と、他の一人が代つて言つた。少しの間、多吉はじつと突立つて、ぞろぞろと近づいて来る一団を眺めてゐたが、ふと、明日は日曜だつた、と忘れてゐたものを思ひ出すと、さつと悲しげな表情が流れた。そして突然くるりと踵を返すと、無意識のうちに左手で鞄をしつかりと横抱きにして一散に駈け出した。一時も早くみんなから見られないところへ、どこか人のゐないところへ隠れてしまひたいのであつた。

多吉の家は、町はづれに流れてゐる小川を渡ると、もう一丁とはない麦畑の中にあつた。麦畑の向うにはすぐ小高い山々の連りがあつて、それはずつと町のうしろまで伸びてゐた。更にその山並の背後には雪に覆はれた高峰が、ゆらゆらと流れて行く雲の間に屹立してゐた。

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