TRENDIA CLASSIC

レモンの花の咲く丘へ

国枝史郎

1 / 85

[#ページの左右中央]

この Exotic の一巻を

三郎兄上に献ず、

兄上は小弟を愛し小弟

を是認し小弟を保護し

たまう一人の人なり。

[#改ページ]

序に代うるの詩二編

孤独の楽調

三味線の音が秋の都会を流れて行く。

霧と瓦斯との青白き光が

Mitily の邦の悲哀を思わせる

宵。……………………

唄うを聞けや。

艶もなき中年の女の歌、

節は秋の夜の時雨よりも

凋落の情調ぞ。

私の思い出は涙ぐみ

ただ何とはなしに人の情の怨まるる。

その三味線と女の歌の聞こゆる間。

木の葉が瓦斯の光に散っている。

君代さん

さし櫛に月の光が落ちている

君代さん。

冴えた霜夜の

秋の白さ。

涙ぐみつつ露は窓のガラスに伝い

老いたる木の葉は散っている。

君代さん

十八の君代さん

鼈甲のさし櫛は

若いあなたには老けすぎた。

(別れし夕の私の印象。)

[#改ページ]

死に行く人魚

時代 騎士の盛なりし頃

場所 レモンの花の咲く南の国

人物 序を語る人

公子

女子

領主

従者

Fなる魔法使い

騎士、音楽家、使女、童、(多数)

[#改ページ]

序を語る人

旧教僧侶の着る如き長き黒衣を肩より垂れ、胸に紅き薔薇花をさす。青白き少年の仮面を冠る。

独白――

国枝史郎の他の作品