大正八年
田甫の上
雁が来た、雁が来た、田甫の上に雁が来た
澄み渡つた夕暮れの
空に、鳴き鳴き、雁が来た
親の雁は
下を見い見い飛んでゆく
子の雁も
下を見い見い飛んでゆく
親の雁は
先へ先へと飛んでゆく
子の雁も
皆な続いて飛んで行く
親の雁が
首を伸して鳴き出すと
子の雁も
首を伸して鳴いてゐる
雁は鳴き鳴き、夕暮れの
空を渡つて、飛んでゆく
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大正九年
どぶどぶ沼
どぶどぶ沼に
鳴いてる
蛙
どぶどぶ沼は
ぴかぴか
光る
子供の雁は
ぱつたぱつた
翼だ
遠い遠い国へ
帰つて
行つた
石団子
石地蔵さまは
石団子持つた
石地蔵さまの
お手には重い
石団子 投げろ
あつち向いて投げろ
ほウ ほウ 鳥が
お山で啼いた
もう日が暮れる
お家へ帰ろ
アンデルセン
世界で一番 よい小父さん
子供の 小父さん
アンデルセン
かしこい日本の 子供らに
お話 聞かそと
字々かいた
学校の うしろで遊んでだ
雀も お話
聞きに来い
種なし筍
お寺の筍
盗まれた
孟宗の筍
種なしだ
和尚さん竹藪
掘つて見た
掘つても掘つても
種なしだ
よくよく種なし
竹藪だ
和尚さん「これは」と
あきらめた
親鶏子鶏
コツコ コツコ 鳴いた
鶏が鳴いた
親鶏 鳴いた
子鶏も鳴いた
あつち見て鳴いた
こつち見て鳴いた
親鶏 子鶏
コツコ コツコ 走れ
下駄屋の店で
下駄買つてはかしヨ
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大正十年
蜂
蜂 蜂 飛んで来た
頭の用心
御用心
下駄ぬいて投げろ
投げても駄目だ
頭の用心 御用心
鳩の家
鳩の家は どこだ
田甫の先だ
馬に乗つて 往つたか
歩いて 往つた
ほんとか 嘘か
何にしてたツけ
襷をかけて赤い髪結つて
こつち見てたツけ
貰ひ子
貰はれました 貰はれました
小さい時に
貰はれました
お父さん居ない お母さん居ない
お馬に乗せて
貰はれました
どの山越えた どの川越えた
お馬に乗せて
貰はれました
お馬も嘶いた わたしも泣いた
小さい時に
貰はれました
古井戸
ここの井戸は
底なし井戸で
昔 お化が出た井戸だ
雨の降る夜に
一ツ目小僧が
傘かづいで出た井戸だ
小豆洗ひも
ざツざツざツと
雨の降る夜に出た井戸だ
お化が棲んでた
ここの井戸は
地獄につづいた古井戸だ。
田園童謡
チラポラ チラポラ
麦の穂は
畑さ 畑さ
出てたつけ。
この頃 姉さま
スツチヨン チヨン
己等目で見たても
スツチヨン チヨン。
姉さま この下駄