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TORENDIA

法王の祈祷

本文約2,700字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

法王の密房で祈りを捧げるインノセンスは、聖地奪還を掲げて旅立つ七千人の小児十字軍に思いを馳せる。彼らは武器を持たず海を渡ろうとする無謀な集団であり、その行いは異端に近い狂気にも見える。法王職という重責と自らの老衰に苦悩するインノセンスは、この幼児たちの行動が神の奇跡なのか、あるいは悪魔の誘惑なのかを判じかねる。迷いの中、彼は自らの無知を告白し、神に対して彼らの行く末を案じつつ教えを乞う。

マルセル・シュヲブ Marcel Schwob

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🎧 法王の祈祷 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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香煙と法衣とより離れて、わが殿中の一隅金薄の脱落ちたこの一室に来れば、ずつと気やすく神と語ることが出来る。こゝへ来ては、腕を支へられずに、わが老来を思ふのである。弥撒を行ふ間は、わが心自づと強く、身も緊つて、尊い葡萄酒の輝は眼に満ちわたり、聖なる御油に思も潤ふが、このわが廊堂の人げない処へ来ると、此世の疲に崩折れて、跼まるとも構ない。「見よ、この人を。」主は実に訓令と教書との荘厳を介して、其司祭等の声を聞取り給ふのではあるまい。紫衣も珠玉も絵画も主は確に嘉し給はぬ。唯この狭い密房の中より発するわが不束な口籠ならば、或は愍み給はむも知れぬ。主よ、かゝる老の身の予は、今こゝに白衣を着て御前に伺候し奉る。予はインノセンスと呼ばれて、君の知しめすが如く、何もえしらぬ。而して予が法王の聖職に在ることを容し給へ、聖職は始より既に制定せられ、予は唯に之に従ふのみ。予がこの高位を設置したのでは無い。予は先づ日の光を、色硝子の荘麗なる反映に窺はむより、寧ろこの円形の玻璃板に透見るを悦ぶ。世の常の老人の如く、予をして哭かしめ給へ、永遠の夜の波の上に、辛らく差上げたこの蒼白の皺顔を君の御前に向け奉る。わが世の終の日数の経ちゆく如く、この痩せ細つたる手指をそうて、わが指金も滑り落ちる。

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