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TORENDIA

熊手と提灯

本文約3,400字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

二の酉の夜、本郷から帰る車中で作者は、浅草の賑やかな提灯の光景や、熊手を買い求める人々を目にする。高価な大熊手を掲げる者や、貧相だが無邪気な老婆、商家の若旦那、堅実な豆屋の上さんなど、行き交う人々の人相を観察し、それぞれの福の行方を思索する。やがて帰宅し、暖かな布団で身体を休めながら、先ほど見た華やかな夜景の余韻に浸り、自分の庭で園遊会を開くという空想を膨らませていく様子を綴る随筆である。

正岡子規

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🎧 熊手と提灯 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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本郷の金助町に何がしを訪うての帰り例の如く車をゆるゆると歩ませて切通の坂の上に出た。それは夜の九時頃で、初冬の月が冴え渡って居るから病人には寒く感ぜられる。坂を下りながら向うを見ると遠くの屋根の上に真赤な塊が忽ち現れたのでちょっと驚いた。箒星が三つ四つ一処に出たかと思うような形で怪しげな色であった。今宵は地球と箒星とが衝突すると前からいうて居たその夜であったから箒星とも見えたのであろうが、善く見れば鬼灯提灯が夥しくかたまって高くさしあげられて居るのだ。それが浅草の雷門辺であるかと思うほど遠くに見える。今日は二の酉でしかも晴天であるから、昨年来雨に降られた償いを今日一日に取りかえそうという大景気で、その景気づけに高く吊ってある提灯だと分るとその赤い色が非常に愉快に見えて来た。

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