TORENDIA
坊っちやん
夏目金之助
TORENDIA
坊っちやん
本文約86,200字 ・ 読了時間 約173分
あらすじ(AIが作成しました)
無鉄砲で真っ直ぐな性格の主人公は、東京を離れ四国の旧制中学校に数学の教師として赴任する。校長や教頭の赤シャツ、同僚の野だいこら、打算的で権威主義的な教師たちの言動に憤りを感じ、持ち前の正義感から彼らと対立を深めていく。正義漢である同僚の山嵐と協力し、卑劣な奸計を巡らせる赤シャツたちに痛快な鉄拳制裁を加えて学校を辞し、東京へ戻るまでの波乱に満ちた教師生活を描く物語である。
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一
親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間程腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出して居たら、同級生の一人が冗談に、いくら威張つても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。小使に負ぶさつて帰つて来た時、おやぢが大きな眼をして二階位から飛び降りて腰を抜かす奴があるかと云つたから、此次は抜かさずに飛んで見せますと答へた。
親類のものから西洋製のナイフを貰つて奇麗な刃を日に翳して、友達に見せて居たら、一人が光る事は光るが切れさうもないと云つた。切れぬ事があるか、何でも切つて見せると受け合つた。そんなら君の指を切つて見ろと注文したから、何だ指位此通りだと右の手の親指の甲をはすに切り込んだ。幸ナイフが小さいのと、親指の骨が堅かつたので、今だに親指は手に付いて居る。然し創痕は死ぬ迄消えぬ。