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TORENDIA

世界漫遊

本文約10,900字 ・ 読了時間 約22分

あらすじ(AIが作成しました)

ウィーンの銀行で小役人として働くチルナウエルは、ある日、馴染みの珈琲店で陸軍中尉のポルジイから世界一周を提案される。ポルジイは女優ドリスとの関係に悩み、自らの代理としてチルナウエルを旅立たせる。帰還したチルナウエルは、珍しい体験談を語りながら銀行で昇進し家庭を築く。一方、ポルジイはドリスとの別離を経て、周囲の期待通り身分相応な結婚へと向かう。二人の異なる運命を描く物語である。

ダウィット Jacob Julius David

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ウィインで頗る勢力のある一大銀行に、先ずいてもいなくても差支のない小役人があった。名をチルナウエルと云う小男である。いてもいなくても好いにしても、兎に角あの大銀行の役をしているだけでも名誉には違いない。

この都に大勢いる銀行員と云うものの中で、この男には何の特色もない。風采はかなりで、極力身なりに気を附けている。そして文士の出入する珈琲店に行く。

そこへ行けば、精神上の修養を心掛けていると云う評を受ける。こう云う評は損にはならない。そこには最新の出来事を知っていて、それを伝播させる新聞記者が大勢来るから、噂評判の源にいるようなものである。その噂評判を知ることも、先ず益があって損のない事である。

この店に這入って据わると、誰でも自分の前に、新聞を山のように積み上げられる。チルナウエルもその新聞の山の蔭に座を占めていて、隣の卓でする話を、一言も聞き漏さないように、気を附けている。中には内で十分腹案をして置いて、この席で「洒落」の広めをする人がある。それをも聞き漏さない。そんな時心から笑う。それで定連に可哀がられている。こう云う社会では「話を受ける」人物もいなくてはならないのである。

こんな風で何年か立った。

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